なんか文字

ウオーッとなったときに書いて載せます。たぶん……

ずっと斜線堂有紀に出会いたかった

2020年。それは、ブンゴウメールが『ドグラ・マグラ365日チャレンジ』を行った年だった。

bungomail.com

ブンゴウメールとは、青空文庫の作品を小分けにして配信し、気付いたら毎月一冊本が読めてしまう! という画期的なサービスである。そのブンゴウメールが2020年にあの『ドグラ・マグラ』を一年かけて配信するらしい。それを知った2019年末の私は、迷うことなくこのサービスに登録をした。

私はミーハーかつしょうもないオタクである。本の内容を楽しむより先にかの”四大奇書”を読破したいという邪な思いのために高校二年生の貴重な休み時間を全て『ドグラ・マグラ』に費やしていたオタクであった。つまり、この『ドグラ・マグラ365日チャレンジ』では本作を読むのは二回目だ。しかし乗りたい、このビッグウェーブに。一回目は内容を何も理解できず、ただただ呉一朗くんがとてつもない美少年であるという情報がもたらす栄養だけで文章を読み進めていたということもあり、私は毎日三分間をドグラ・マグラに捧げる2020年をやっていくことを決めたのである。今度こそこの物語を理解したい!!!!!(ちなみに貴重な大学時代の空きコマや自動車学校の待ち時間は『虚無への供物』と『匣の中の失楽』に捧げていたのだが、マジで藍ちゃんがかわいくて蒼司と牟礼田にフラグが立ってて真沼くんが美しくてナイルズとホランドが最高色素薄め共依存双子なことしかわからなかった)(雑語りすな!!!!!!!)(『黒死館殺人事件』は登場人物がなんか……謎の引用……? でラップバトルし始めたところで止まっています…………)

そんなこんなで私は毎晩歯を磨きながら『ドグラ・マグラ』を読む習慣を手に入れた。自分が一年間何かを継続できる人間だとは思っていなかったため、思わぬ自己肯定感の向上や達成感はあった。しかし、二周目であろうと『ドグラ・マグラ』を完璧に理解することは叶わなかった。読後になんとなく自分なりの解釈を作り上げたはよかったものの、もう既にそれがどういったものだったか忘れてしまっている。

そうして、ぼんやりとした解釈と、学ランを着ている童顔の美少年が追い詰められている様はかわいいなあ~という感慨だけが残り、2020年が終わった。

2021年を迎えた私は、夜中に歯を磨きながら一抹の寂しさを感じていた。読むものがないのだ。歯を磨きながら『ドグラ・マグラ』を読むことが習慣化していたせいで、何も読まずにアホ面でしゃこしゃこすることに物足りなさを感じていた。

そこで決断したのが、kindleで小説を買う、ということである。

今まで私は小説に関しては紙派であった。根拠もなく「紙のほうが物語に没入できる気がする」と考えては紙の本を買い、しかし読む時間を捻出できずに、2020年秋ごろに購入した怪盗クイーンの100冊読書ノートにもほとんど記録ができないでいた。

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しかし歯磨きをしながら紙の本を読むのはけっこうキツい! だったらもうしょうがない、歯磨きをしているときに読む分の本だけでもkindleで買おう! 

そう思って1月2日に購入したのが、

かねてより気になっていた斜線堂有紀先生の『死体埋め部の悔恨と青春』だった。

これが墜落の始まり。

斜線堂有紀作品が趣味に合いすぎて困る

『死体埋め部の悔恨と青春』を読んだ私は、そのあまりの先輩後輩概念の完璧っぷり、話の面白さに慄いた。私は高校時代に読んだ『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』にて死体埋めの良さに憑りつかれたオタクであったし、何より先輩後輩概念が大好きだった。特に、大事なシーンで先輩のことを「あんた」呼びする後輩、というシチュエーションが好きだった。だから、クライマックスのシーンをバイト帰りのバス停で読んだとき、本当に変な声が出そうになった。先輩後輩の……プロなのか?(そうだよ)

そうして私は、死体埋め部以外の斜線堂作品にも手を伸ばし始めた。歯磨きの時間に読むというルールを無視してとにかく斜線堂有紀作品を貪るように読んだ。全部面白かった。今まで一年間に六冊読んでいれば良かったのが四日に一冊になった。バスの待ち時間、髪を乾かしている時間、シフト前の若干の空き時間、そういった時間を全部使って読んだ。語彙の浅いところに「蠱惑的」「恐慌状態」「ややあって」などの言葉が追加された。

こいつ何を言っているんだ? と思われるかもしれないのだが、完全に私は出会うべくして斜線堂有紀作品に出会ったな……という気でいる。作中で描かれる関係性が好みすぎるのである。しかも、この好みには今までハマってきた二次創作カップリングや漫画作品やラノベなどのルーツがある。そして、作中で語られる登場人物たちの抱える思いについて、自分自身が心当たりを感じるものが多くある。「これ、、、、、私やないかい、、、、、、」があるのである。今まで他の作品では出会わなかった角度で、それがある。私はずっと、斜線堂有紀に出会いたかったのだ。

唐突に『ななしのアステリズム』の話をします

実は、斜線堂有紀先生の作品を読んだのは死体埋め部が初めてではない。2020年8月にJUMP j BOOKSのnoteで全文無料公開された『愛について語るときに我々の騙ること』が初めての出会いだった。

(今はアンソロジーに収録されてるので試し読みになっています)

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(表紙の絵って愛ことの三人だよね…………?)

なぜこの作品を読むに至ったかというと、投稿される前日に先生の告知ツイートを見かけてしまい、猛烈に気になったからだ。

オアアアアアアアアアアア~~~~~~~~~!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?

唐突だが、みんなは『ななしのアステリズム』という最高最高思春期青春こじらせ切なピュアライアーゲーム人間関係漫画を知っているか………?

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これは私が今まで生きてきた人生の中で一番好きな漫画だ。好きすぎて人生に組み込まれているので最近就活の面接でもななアスについてお喋りしてしまった(その企業からは祈られましたが……)。

『ななしのアステリズム』は、中学生の仲良し三人組がその内部でままならない三角関係をやっている様子を描いたものである。繊細でかわいい絵柄で描かれる思春期特有の不安定さだったり好きって何だ? という問いだったりが甘く切なく心に響く傑作である。

そして、AはBが好き、BはCが好き、CはAが好き、という一周する三角関係と、誰が何を知っているかということ、何を知らないかということ、三人の間の「好き」の重さの均衡が鍵になってくるということ――一歩違えば壊れてしまう緊張感が、この作品の一番の魅力である。

というわけで、高校時代に『ななしのアステリズム』を浴びた私はこの一周する三角関係だけが真の三角関係であり、至高なのでは……という思想を持つようになった。

しかしこの「真の三角関係」に創作作品で出会える確率は極めて稀である。(『ななしのアステリズム』以外で言うと、初期の『青のフラッグ』や『合格のための!やさしい三角関係入門』、『ゆりでなる♡えすぽわーる』の四話後編などはそれですが、他にはあんまり思い当たらないので、知ってる方がいらっしゃったら教えてください……)『ななしのアステリズム』が完結してしまった今、中々「真の三角関係」に出会えることはない……そんな中タイムラインを駆け抜けて行ったこのツイートを見逃さなくて本当に良かった。

公開日になり、早速『愛について語るときに我々の騙ること』を読んだ私は、作品に出てくる”三角関係の均衡”の概念だったり、”恋愛よりも友情を、三人組を取る”の姿勢だったり、そういうものにブッ刺された。恋愛なんかよりも大事なものを守るために多少意地の悪い方法を使って、ギリギリで守って、そしてその原動力が切実なの、好きすぎるんだよ……! 思えばなんでこの時に斜線堂作品全部読むぞのターンに入らなかったんだ、と思うんだけど、まあ今どっぷりなんだからそれでいいか。

そんなこんなで、2021年の墜落の前にもちょこちょこと斜線堂先生の書かれた文章は知らず知らずのうちに目にしたりしていた。例えば荒木比奈エッセイであったり、

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百合SF特集号のSFマガジンに載った『回樹』であったり、タワーオブテラーにまつわるブログ記事だったり、かの有名な執着と敬愛についてのツイートだったり。タワーオブテラーや執着敬愛ツイートなんかに関しては、後から「あれ斜線堂先生の記事(ツイート)だったのか……!」と気付いたので、人生が伏線回収された感覚があった。結果論? 違うよ、運命、だよ!!!!!(神楽ひかり)

「魂の形に合う」案件(今までで一番デカい自分語り)

というわけで、ここからは読んでいて「出会ってよかった…………」「私のために書かれたのか…………?」と思ってしまった(自意識が過剰すぎる)斜線堂先生の作品をいくつか書いていく。

①『神の両目は地べたで溶けてる』

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↑全文無料で読める!!!!!

こちらは、あの~、俺、なんだよな………(大言壮語)

あらすじとしてはマイナーな推し小説家を過激派って言ってもおかしくないくらいに推している女子高生・岬と、その小説家のことは好きだけれども岬に気圧されがちな男子高生・舞立の青春の物語であり……。いちファンとしての無力感、地道な応援と努力は報われるのか、現実的な推し方って何、みたいな話で…………。

最終的に主人公たちがどういう行動をとるのかは小説を読んで確かめてほしいのだが、私にもマイナーな作品を応援していたが結局打ち切りになってしまったという経験があり、その時は本当に本当に好きで内容も素晴らしい作品がたくさんの人に読まれないまま終わっていったこの世界に絶望してしまったので、全身が「共感」になり、読んだ後はしばらく抜け殻になってしまっていた。

ちなみにその作品とは上で紹介した『ななしのアステリズム』なのだが(電子書籍で読めるからマジで読んでくれ!!!)、この作品をリアルタイムで追っていた高校時代に友人に読ませたり、更新日が近づくたびに「あと何日で〇〇話だよ!!!」「今日だよ!!!」「読んだ!?!?!?」と圧をかけていたことを思い出すなどもした。

そして高校卒業後はこの漫画を推すために本屋でバイトをし、チャンスを見つけて面陳+クソデカポップを書き試し読みも置く、という行為もやった人間なので、本当に本当にア~私じゃん……私だよこれは……ア~……となってしまい、将来や人生にまで思いを馳せ、しばらくぐるぐると巡る思考から戻ってこられなくなった作品なのであった。本当に紙の本が絶版になる前に実力行使で推せて良かったな。あの時売り場で立ち止まって試し読みを読んでくれたり、単行本を買ってくれたりした人たち、本当にありがとう、LOVE……。

②『ゼロの証明』

↑こちらも無料で読めます。やったー!!!!!!!!!

男男と女女が同時に楽しめる、愛の証明って何だろう、ストロングゼロ、一夜の過ち、幼い頃の強烈な思い出と執着、日常の謎。これが全部合わさったものが嫌いなわけないだろ!!!!!!!!!!!!!

まだ斜線堂作品に出会って間もない頃、「noteで埋め部シリーズの番外編? 的なやつ? 読んじゃお♪」と一覧を見ていたら目に飛び込んできたこの書き出し。え? もしかして…………男と男が一夜の過ちを犯して…………? ⇒読むしかないだろうが!!!!! そうして一気に読んでいる間、関係性は最高だわ、女女のクライマックスが無敵すぎるわ、展開の移り変わりにもドキドキしっぱなしだわでずっと高揚しっぱなし。まさに読むストロングゼロ。純粋に好きな要素が詰まりに詰まった小説なので、この八か月間で何度も何度も繰り返し読んでいる。

皋所縁の存在…………

ここからは、小説の紹介というよりかはコンテンツの紹介になってしまうのだが……(というかこの記事は自分語りのつもりなので紹介というのも違うのだが)

みんなは……あの児童文学作家・はやみねかおる先生を知っておられるだろうか……

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私とはやみね作品の出会いは小学一年生の時である。学級文庫に『そして五人がいなくなる』が置かれていたのをきっかけに、夢水清志郎シリーズや怪盗クイーンシリーズ、都会のトム&ソーヤシリーズなどを読み漁り、赤い夢にどっぷり浸かるようになった。それは成人した今になっても変わらず、はやみね先生の新刊が出れば購入し、友人にお世話になることがあれば「いぃ~つも、すまないねぇ」と口にする生活を送っている。

はやみね作品は、小学生時代クラスで爆流行りしていた。高校生になっても、教室で『都会のトム&ソーヤ』を読んでいれば「面白いよね、それ」と声を掛けられるくらい、人々の心に潜在的に残り続けている。この世には、はやみねかおる先生から影響を受けて生きている人間がたくさんいるはずなのだ。

そして、はやみねかおる先生から影響を受け人生をやっている人間が存在するのは、「この世」だけではない!!!!!!

kamigamikeshin.jp

斜線堂有紀先生が原作・小説を務めるプロジェクト『神神化身』には、はやみね作品に登場する夢水清志郎から影響を受け「みんなを幸せにする名探偵になりたい」と願い、そして実際に名探偵になった男が、いる…………!!!!!!!!!!!!

『神神化身』は楽曲と小説によって展開されていく、顔と声のいい男たちがいっぱい出てきて色んな種類の感情をこじれ合わせつつ、複雑に絡み合った運命と世界に翻弄されながらユニットを組んで戦うサイコーコンテンツである。キャラクターの設定が異様に細かく作りこまれているため、当然「好きな本」もキャラクターごとに設定されているのである。

そして、キャラクターのうちの一人、元探偵の皋所縁(さつきゆかり)の好きな本が、はやみねかおる著『そして五人がいなくなる』なのである。こんなことあるか? 本当なので↑のリンクを踏んで緑色の髪の毛の男のプロフィールを確認して欲しい。探偵になった経緯などは書籍に書かれている。

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書籍を読むと、なんと、『神神化身』には怪盗クイーンを幼少期に読んでいた怪盗キャラがいることもわかる。夢水清志郎を読んでいた元探偵と、怪盗クイーンを読んでいた怪盗!?!??!?!?!?!?!? そんなことあるか? そんなんもう『オリエント急行パンドラの匣』なんよ。(?)

bookclub.kodansha.co.jp

 

(『オリエント急行パンドラの匣』、大好き……。)

というわけで、はやみねかおる作品を十五年以上読んできオタクにとっては、『神神化身』はたまらない作品なのである。はやみねオタク、全員『神神化身』に触れてほしいよ…………。

『神神化身』は本当にそれ以外の要素ももちろん面白く、才能だったり執着だったり〇〇〇(ネタバレ)要素だったりが斜線堂先生の読みやすくて惹き込まれる文章で読めるので、マジのマジのマジでおすすめ。最近は崖っぷち泥沼三角関係ユニットがめちゃくちゃアツい。

おわりに

そんなこんなで、斜線堂作品に出会えてよかった~!!!!! という話を長々としてきたが、本当にオタクのオタク遍歴の話になってしまった。読んでもらったらわかると思うが、これまで熱を注いできた作品ややってきたオタク活動、好きな要素などが一気に終結したかのような斜線堂作品に出会えて本当に良かったな、このオタクは……。と思うし、出会うべくして出会ったな……とも思う。良かったね。

そして今回は大分自分に引き合わせて斜線堂作品について語って(?)きたが、私でなくとも現代のオタクなら読んでいて「魂に合うな~」という呼吸のしやすさだったり価値観だったりを描いていらっしゃる作家さんだと私は思うので、気になったら是非!!! 読んで頂きたい!!!!! そもそも話が……めちゃくちゃ面白いから……!!!!!

そして斜線堂作品を読んだことにより、他のミステリ作品もたくさん読むぞ!!! という気持ちになり、今はメルカトル鮎シリーズを一つずつ読んでいる。いっぱい読むぞ~!!! 小説!!!!! 電子書籍は良い文化!!!!!